
まとめ加工か小分け加工か。ロットを納期と効率で決める3つの物差し
リピート品の注文書が届きました。 「300個。毎月100個ずつ、3回に分けて納品」。
段取りに1時間半かかる品物です。 「どうせなら300個まとめて流したほうが早いよな」と思う一方で、来週はほかの急ぎも入っている。まとめて流したら、機械が2日ふさがる。でも3回に分けたら、段取りを3回やることになる。
毎回なんとなく決めて、あとから「やっぱり分ければよかった」「まとめればよかった」と思う。現場ではよくあることです。
まとめ加工と小分け加工は、どちらが正しいという話ではありません。 品物ごとに、得なほうが変わるだけです。だから、毎回同じ物差しで見られるようにしておくと、迷う時間がぐっと減ります。
結論:ロットは、①段取りの重さ(1回分の加工時間に対して、段取りが何割か) ②後ろの仕事を押さないか(まとめた分だけ機械がふさがっても、ほかの納期に間に合うか) ③作り置きの重さ(置き場・お金・設計変更や不良のリスク)の3つで決めます。段取りが重く、後ろが空いていて、作り置きが軽い品物はまとめる。どれか1つでも引っかかるなら、分けるか、間を取ります。
進める順番は、こうです。
- 段取り時間と、1個あたりの加工時間を書き出す
- 「段取りの重さ」を割合で出す
- まとめた場合に、機械が何日ふさがるかを見る
- 作り置きになる数と、その重さを見る
- まとめる・分ける・間を取る、のどれかに決めて、理由を1行残す
何が起きているか──まとめるほど得なもの、まとめるほど重くなるもの
まとめ加工と小分け加工で迷うのは、片方を取ると、もう片方が重くなるからです。
まとめて流すと、得をするのは段取りの回数です。段取り替えが1回で済むので、そのぶん機械が加工に使える時間が増えます。初品の確認も1回で済みます。
一方で、まとめるほど重くなるものが3つあります。
- 機械がふさがる時間:まとめた分だけ、その機械でほかの品物が流せません。急ぎの注文が入ったときに割り込みにくくなります。
- 作り置きの置き場とお金:2回目・3回目の納品分は、納期まで棚で待つことになります。材料代と加工の手間が、売上になる前に先に出ていきます。
- あとから変わるリスク:作り置きの途中で設計変更が入ったり、不良が見つかったりすると、まとめた分がまとめて手直しになります。
小分けにすると、この逆です。段取りは増えますが、機械は早く空き、作り置きはほとんど残りません。
どちらを取るかは、その品物で、どちらの重さが大きいかで決まります。そこを数字で見られるようにするのが、次の3つの物差しです。
物差し1:段取りの重さを「割合」で見る

最初の物差しは、段取りがどれくらい重いかです。
段取り時間だけを見ても、重いかどうかはわかりません。90分の段取りでも、加工に3日かかる品物なら気になりませんし、加工が30分で終わる品物なら大ごとです。 そこで、1回分の加工時間に対して、段取りが何割かで見ます。
冒頭の品物で計算してみます。段取り90分、加工は1個3分とします。
| 流し方 | 段取り | 加工 | 合計 | 段取りの割合 |
|---|---|---|---|---|
| 100個ずつ3回 | 90分×3回=270分 | 3分×300個=900分 | 1,170分 | 1回あたり 90÷300=3割 |
| 300個を1回 | 90分×1回=90分 | 3分×300個=900分 | 990分 | 90÷900=1割 |
まとめると、段取り2回分の180分(3時間)が浮きます。 段取りの割合が3割もある品物は、まとめる効き目が大きいほうです。
反対に、段取りが15分の品物なら、100個ずつでも 15÷300=5%。3回に分けても増えるのは30分です。こういう品物は、無理にまとめなくても困りません。
目安を1つ置くなら、こんなふうに考えるとわかりやすいです。
- 段取りの割合が1割未満:小分けでも負担は小さい。分けて困らない
- 1〜3割:ほかの2つの物差ししだい
- 3割を超える:まとめる効き目が大きい。まとめられないか、まず考える
この数字は現場によって変わるので、「うちはこのくらい」を一度決めておけば十分です。 段取り時間そのものを測ったことがなければ、段取り時間を見積に入れ忘れない、確認のコツ の測り方が使えます。
物差し2:まとめた分、後ろの仕事を押さないか
2つ目は、まとめた分だけ機械がふさがって、ほかの納期に響かないかです。
さきほどの300個をまとめて流すと、合計990分。1日8時間(480分)で回すなら、2日と少しその機械を使います。 100個ずつなら、1回あたり390分で、1日以内に収まります。
ここで見るのは、その2日のあいだに、同じ機械を使う別の注文が入っていないかです。
- 来週は比較的空いている → まとめて流しても、ほかを押さない
- 来週は別の品物の納期が詰まっている → まとめると、そちらが遅れる
まとめて浮いた3時間より、ほかの品物が1日遅れるほうが、ずっと痛いことがあります。 機械ごとの来週の詰まり具合は、来週の忙しさを先に読む、負荷山積み表のつくり方と使い方 で一枚にしておくと、この判断がすぐできます。
もうひとつ、いつ特急が入りそうかも見ておきたいところです。特急が入りやすい時期にまとめて機械をふさぐと、途中で止めて段取りし直すことになり、結局まとめた意味が薄れます。割り込みの扱い方は 特急品の割り込みで工程を乱さない、順番の決め方 にまとめています。
物差し3:作り置きは軽いか重いか
3つ目は、作り置きの重さです。まとめて作った2回目・3回目の分は、納期まで棚で待ちます。その重さを、3つの点で見ます。
置き場 200個の部品が、2か月ぶん棚に乗ります。小さな部品なら箱1つですが、大きな部品なら通路をふさぐこともあります。置き場が足りない現場では、まとめた分がほかの仕掛品とまざって、探す手間や取り違えの元になります。
お金 1個あたりの材料代と加工の手間が1,200円なら、200個で24万円が、売上になる前に棚で眠ります。毎月の支払いに余裕がない時期は、この重さが効いてきます。
あとから変わるリスク いちばん気をつけたいのはここです。
- 図面の改訂や仕様変更が入りやすい品物か
- 注文が内示ベースで、数量が変わりやすい品物か
- 量産が安定していて、初品からあとで不良が見つかったことがない品物か
改訂の多い品物や、内示どおりに来ないことがある品物は、まとめた分がまるごと手直しや在庫になることがあります。 内示とのズレへの構え方は 内示どおりに来ない。確定注文とのズレに振り回されない構え方、設計変更の受け止め方は 客先の設計変更・仕様変更に慌てない。工程を止めずに受け止める手順 が近い内容です。
具体例──3つの物差しで決めてみる
冒頭の品物を、3つの物差しに当ててみます。
| 物差し | 見たこと | 判定 |
|---|---|---|
| 段取りの重さ | 100個ずつだと段取りが3割 | まとめたい |
| 後ろの仕事 | 来週は別の品物の納期が2件詰まっている | 分けたい |
| 作り置き | 部品は小さい。ただ、半年前に図面改訂が1回あった | やや注意 |
1つ目は「まとめたい」、2つ目は「分けたい」。こういうときは、どちらか一方に決めなくて大丈夫です。間を取る方法がいくつかあります。
- 2回に分ける:150個ずつ2回にすると、段取りは2回(180分)。合計1,080分で、3回に分けるより90分短くなります。1回あたり540分なので、機械がふさがるのは1日と少し。作り置きは50個・1か月ぶんだけです。
- 材料の準備だけまとめる:切断や下準備は300個ぶん一度にやっておき、加工は100個ずつにする。前の工程だけでも効き目が出ます。
- 段取りを短くする:段取りを90分から45分にできれば、3回に分けても増えるのは90分だけになります。小分けがぐっと楽になるので、長い目で見るといちばん効く手です。始め方は 段取り替えを短くする、シングル段取りの始め方 をどうぞ。
この例なら、「来週は100個だけ流し、残りは再来週に200個まとめる」という決め方も現実的です。 数字を見たうえで選んでいれば、どれを選んでも間違いではありません。
影響──ロットの決め方がそろうと、現場が静かになる
まとめるか分けるかを毎回なんとなく決めていると、その日の担当者の感覚で決まります。ある人はいつもまとめ、ある人はいつも分ける。結果として、機械の空き方が週ごとにばらつき、納期の読みもぶれます。
3つの物差しで決めるようにすると、
- 「なぜこのロットにしたか」を、誰でも説明できる
- 段取りの重い品物と、軽い品物の区別がつき、段取り改善の優先順位が見えてくる
- 棚に眠る作り置きが減り、置き場と現金に余裕が出る
という変化が出てきます。 棚に作り置きや仕掛品がたまりやすい現場は、「気づけば山になっている」仕掛品の滞留を、工程の渡し方で減らす もあわせて読むと、つながりが見えやすくなります。
かける手間は、品物ごとに数字を3つ書き出して、表に当てる5分ほどです。リピート品なら、一度決めた結果を次回もそのまま使えます。
明日やること
明日、現場に出たら、この順番で試してみてください。
- いま迷っているリピート品を1つだけ選ぶ
- その品物の段取り時間と、1個あたりの加工時間を書き出す
- 「段取り÷1回分の加工時間」で、段取りの割合を出す
- まとめた場合に、機械が何日ふさがるかを出し、その間の予定と並べる
- 作り置きになる数と、改訂や内示変更が多い品物かどうかをメモする
- 「まとめる/分ける/間を取る」を決めて、理由を1行、注文書の控えに書いておく
全部の品物でやらなくて大丈夫です。 まずは、いちばん迷うことが多いリピート品を1つ。それだけで、次に同じ品物が来たときに迷わずに済みます。
まとめ加工・小分け加工の判断チェックリスト
- 品物ごとに、段取り時間と1個あたりの加工時間がわかっているか
- 段取り時間を「1回分の加工時間の何割か」で見ているか
- 「うちの現場では何割を超えたらまとめを考える」の目安があるか
- まとめた場合に、機械が何日ふさがるかを出しているか
- その期間に、同じ機械を使う別の納期が詰まっていないか確認しているか
- 特急が入りやすい時期かどうかを見ているか
- 作り置きの置き場が、ほかの仕掛品とまざらずに確保できるか
- 作り置きで先に出ていくお金を、ざっくり把握しているか
- 図面改訂や内示変更が入りやすい品物かどうかを見ているか
- 「2回に分ける」「準備だけまとめる」など、間を取る案も考えたか
- 決めたロットと理由を、1行残しているか
- 段取りの重い品物を、段取り改善の候補に挙げているか
12個そろっていなくても大丈夫です。 最初の2つ、段取り時間と加工時間がわかれば、もう半分は決められます。
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まとめるか、分けるか。 その場で決めて、あとから「やっぱり逆だった」と思うのは、判断が下手だからではありません。段取り・納期・置き場・お金を、毎回ぜんぶ頭の中だけで天秤にかけているからです。それを毎日やっているのは、それだけで大変なことです。
物差しを3つ、紙の上に出しておけば、頭の中の天秤はずっと軽くなります。 明日は、迷っているリピート品を1つだけ選んで、段取り時間と加工時間を書き出してみてください。次に同じ注文書が届いたとき、きっと少し早く「今回はこうしよう」と決められます。